再生

 裏のシナノキが雪の重みで倒れ、林道を塞いでしまいました。嗚呼ついに倒れたか~と横たわる幹を潜り抜けると、キノコの硬い笠が頬をこすりました。
 その木にはもうずっと以前からサルノコシカケ(の仲間)が生えていて、キノコに摂りつかれてしまった幹は傍目から見てもぼそぼそと元気がありませんでした。キノコには木材腐朽菌と呼ばれるグループがあり、枯れた木や生きた木を腐らせます。サルノコシカケと総称される硬いキノコの仲間や椎茸、ナメコなどはそのグループです。
 春になって野山に出かけると、倒木や大きく折れた枝をよく目にします。それが馴染みの木だったりすると、とても寂しく思うのですが、年老いて弱った木が菌類によって分解され、こうして朽ちていくのは新しい森を再生する上でとても大切なシステムです。もし分解してくれる菌類がいなければ・・・。想像してみて下さい。数多の遺骸で溢れた世界を・・・。

 写真:シナノキについたサルノコシカケの
仲間 (11/17)

冬に鳴く虫

 冬でも鳴く虫がいることをご存知でしょうか?
 じつは、紅葉谷入り口周辺では真冬でもこの虫の鳴き声を聞くことが出来るのです。
 それは「マダラスズ」というコオロギで、真冬に鳴く虫として知る人ぞ知る存在です。真冬といえば外は当然氷点下。コオロギが鳴いているなんてちょっと信じられないような気がしますよね。普通なら夏頃から発生し、冬は卵で越冬しているはずです。なのになぜ紅葉谷のマダラスズは冬でも見られるのでしょうか?
 紅葉谷入り口周辺は層雲峡温泉の源泉地になっていて、いくつもの湧出口が覗いています。その暖かい地熱のおかげで、寒い冬でもマダラスズは活動していられるのです。他にも屈斜路湖畔などの地熱帯で冬に鳴くことが知られています。
 冬に鳴く虫の声を聞いてみませんか?耳を済ませば、落ち葉の下からジージージー・・・と奏でる声が聞こえてくるはずです。

 写真:マダラスズ(11/13 紅葉谷)

ヒグマたちの冬

 昨日から降り積もった雪は、見る見るうちに山あいの林道を白で覆い隠してしまいました。その白の中で、この大きな足跡はとても目立ち、私をドキリとさせるには十分でした。なぜなら、ベタベタとついた足跡の傍にはエゾシカの死骸があったからです。エゾシカには食べられた形跡があり、足跡も新しかった為すぐにその場を離れました。
 ヒグマが冬ごもりに入るのは個々の生理状態により差がありますが、早い個体では11月中旬頃から入るそうです。もしかすると、もう穴を探している頃かもしれません。しかし、厳冬期に雨が降ったり、平均気温が上昇したりと、異常気象や温暖化が叫ばれて久しい今年。これがいきものたちの生理にも少なからず影響を与えているのです。今年はどんな冬になるのでしょうか。ヒグマたちに安眠は訪れる?

 写真:林道に続くヒグマの足跡(11/11)

さよなら・おかえり

 朝の楽しみは庭先に訪ねてくる野鳥たちを窓越しに眺めること。11月になってもまだ腰を落ち着けていたルリビタキもこのところ顔を見せず、ついに南へと旅立ったのか。長い旅路、無事でありますように。
 土手に面した山葡萄の蔓は、鳥たちの憩いの場となっているようで、太っちょのゴジュウカラが虫探しに精を出し、先に食事をしていたコゲラやシマエナガも遠慮するぐらい。一方、カケスが地面でしきりに何かを啄ばんでいる様子、一体何を?と見てみると、どうやらカメムシが目当てらしい。カメムシが減ってくれるならありがたいとカケスに感謝するも、何せここはカメムシ王国。どうしても供給量が消費量を上回ってしまうのです。
 旅立ってしまう鳥もいれば、越冬にやって来る鳥たちもいます。ツグミの賑やかな一団が北からやってきました。落ち葉をパッパッとひっくり返し、虫を探す姿が面白い。
 葉が落ちて、森はすっきりと見通しが良くなりました。野鳥観察には丁度良い季節です。

 写真:ゴジュウカラ(層雲峡 11月)

復旧と初雪

 実は先週の落雷により、しばらくインターネットが不通になっておりました。回線直撃の為、電話もファックスもみんなダメ。丸一日、陸の孤島となっていました。何とかその日の夕方には電話はつながるようになったのですが、インターネットの方は壊れたルーターの修理に数日を要し、本日やっと復旧した次第です。
 さて、この雷が「雪下ろしの雷」となり、先週金曜日は層雲峡だけではなく、旭川や上川などの平野部もついに初雪を迎えました。これが名残りとなった柳の黄色い葉も真っ白に雪を被り、峡谷は一夜にして雪景色。物置にしまっていた除雪スコップも半年振りの出番です。
 毎年の事でありながら、こうも唐突に新しい季節が訪れた朝は新鮮です。こうして踏みしめる新雪の感触を味わいながら、長い冬の始まりを思うのです。

 写真:温泉街神社裏にある黒岳登山口 
(11/4)