雲ノ平のチングルマ

 黒岳石室を出発し、平坦に続く雲ノ平に足を運ぶとすぐに、登山道を縁取るように咲くチングルマの群落が現れます。直径1mくらいのこぶが、いくつも連なったようなユニークな地形が見られる雲ノ平。花が咲く前は緑色のこぶ。そこに根気よく1本1本花を挿しても、とてもこんな風には仕上げられません。
 
(ちなみに紅葉の季節は赤いこぶに変身します。)

 *黒岳7合目~山頂間の雪渓は消えました。
 
 *開花状況*
 (9合目)チシマノキンバイソウ○、ウコンウツギ、カラマツソウ○、ミヤマキンポウゲ、ヤマブキショウマ↑/(山頂)エゾツツジ○、イワブクロ○、エゾイワツメクサ○、コマクサ○、チシマキンレイカ↓/(石室~雲ノ平)チングルマ○、エゾコザクラ○、キバナシャクナゲ、コマクサ○/(北海沢周辺)エゾコザクラ○、ジムカデ○、チングルマ、エゾノツガザクラ、ミヤマリンドウ↑

 写真:チングルマ(雲ノ平7/18)

赤岳の登山道

 雪渓が後退し登山道が徐々に現れるようになると、雪渓上のトレースを軌道修正するための作業が重要になってきます。昨日も赤岳登山事務所のパトロールの方がルート旗の位置を変えたり、ロープを張ったりと慎重に作業を行っていました。
 「雪解け→雪渓上のトレースと本来の登山道がずれてくる→登山者:そのまま進んで登山道に出ようとする→植生帯に別の踏み跡ができる」このように、登山道が複線化する原因のひとつが雪解け時期に伴うもの(登山道に流れ込む雪解け水を避けての踏み跡も含めて)。
 「汚れるし歩きづらいから」「戻るのは面倒だから」
 けれどいったん痛んでしまった植生は、洗濯すればすぐ綺麗になるというような簡単なものではありませんし、もちろん人間のように自由に動くこともできないんですよね。

 *雪渓*
 (第1花園)看板付近に20m。その先に3mくらい小さく残る/(第2花園)100m程。斜面全体に大きく残り、固く滑りやすいので要注意/(奥ノ平)30m/(第3雪渓)15m/(第4雪渓)2つに分かれ20mずつ

 *開花状況*
 (第2花園)エゾコザクラ↑、チングルマ↑/(コマクサ平)コマクサ○、イワブクロ○/(第3~4雪渓間)エゾコザクラ↑、チングルマ↑、キバナシャクナゲ○、エゾノハクサンイチゲ、アオノツガザクラ蕾/(山頂)エゾツツジ↑、キバナシオガマ○、チシマキンレイカ、コマクサ○、エゾタカネツメクサ○、イワヒゲ、タカネスミレ↓

 写真:第2花園の雪渓(7/17)
    例年8月上旬頃まで残ります。

ウコンウツギもチシマノキンバイソウも

 快晴、連休中日、花盛期。黒岳にも大勢の登山者や観光客が訪れて、登山道ではすれ違い待ちの渋滞発生。昨日は黒岳石室も宿泊者で満杯だったそう。
 雪渓は8合目周辺に3mくらいのが2箇所残るのみですが、これが曲者。踏み固められて凍りついたような状態で、とくに下りでは注意が必要です(先日この雪渓で骨折者が出たばかり)。今日は暑さのため、途中で熱中症にかかり下山している方が何人もいました。中には飲み物も持たずにという方も!人が大勢訪れようとも、登山は気軽なハイキングとは違います。気持ちにもしっかりとした装備が必要です。
 9合目、こぼれそうなほどに咲くウコンウツギにチシマノキンバイソウが鮮黄色を添える斜面。毎年楽しみな風景です。そろそろエゾツツジがいい頃かと期待しつつ、汗をぬぐって立った山頂は勝ってイワブクロが満開でした。

 *開花状況*
 (9合目)ウコンウツギ○、ハクサンチドリ○、チシマノキンバイソウ○、ミヤマキンポウゲ○、トカチフウロ○、クロユリ↓/(山頂)エゾツツジ○、イワブクロ○、エゾイワツメクサ○、コマクサ○、チシマキンレイカ○、イワヒゲ○

 写真:ウコンウツギとチシマノキンバイソウ
    (黒岳9合目・7/15)

キバナシオガマの顔

2007年7月12日(その2)

 小屋泊りの登山者はすでにそれぞれの予定地へ向けて出発し、今宵の宿泊者が到着するにはまだ早い正午前の白雲小屋はいたって静か。そこへブ~ンとやって来たマルハナバチが蜜を吸いに潜り込んだのは花も見頃のキバナシオガマ。日本では大雪山だけに生育する固有の植物です。「シオガマ」というと他にタカネシオガマ、ヨツバシオガマなどがありますがどれも花はピンク色。その中でも紅一点(この場合は黄一点)の黄色い花を咲かせます。じつはこのシオガマたちは、スゲの仲間に寄生する半寄生植物。ときどき感心するぐらい立派な株に出会うことがありますが、それもじつはスゲのおかげ半分。「寄生」も厳しい環境で習得した生きる技なのです。
 
 *開花状況*(白雲小屋周辺~小泉平)
キバナシオガマ○、エゾタカネツメクサ○、キバナシャクナゲ、チシマキンレイカ↑、エゾノハクサンイチゲ、エゾツツジ蕾~開花

 写真:キバナシオガマ(白雲小屋7/11)

小さいですが黒いのが。

2007年7月12日(その3)

 緑岳第二花畑の先、エイコの沢の崖斜面でヒグマが採食中。沢の音が気配をかき消すのか、それともよほど夢中なのかこちらを見向きもせずひたすら顔を地面に向けて草を食んでいました。
 高原温泉周辺は雪解けが早かった為、ヒグマも早い時期から活発に活動を開始し、沼めぐりコースでは今シーズンに入ってからすでに50件ほどの痕跡や個体が確認されているそうです(ヒグマ情報センター確認)。高根ヶ原斜面でも姿が確認され、三笠新道は7月5日より通行止めとなりました。
 「クマはいますか?」何度も繰り返したやりとりですが、こんな光景に出会うとあらためて素直に実感させられます。
 「はい」

 *緑岳コースの雪渓*
 (第一花畑)50m/(第2花畑看板付近)50m。花畑全体には大きな雪渓が乗っていますが淵の登山道が出てきました/(第2花畑~エイコの沢崖)100~150m程度。雪渓がくびれるように分断されてきました。ピンクテープの目印がありますが視界不良時は注意。

 *開花状況*
 (第一花畑)エゾコザクラ○、チングルマ○綿毛もあり、エゾノツガザクラ↓、ミヤマリンドウ↑、ヨツバシオガマ↑/(第二花畑)雪渓です/(ガレ場)イワブクロ↑、コケモモ○、エゾイソツツジ○、エゾマルバシモツケ○/(山頂)チシマキンレイカ↑、コマクサ↑、クモマユキノシタ↑、エゾタカネツメクサ○、エゾツツジ蕾~開花、エゾハハコヨモギ↑

 写真:中央の黒いのが採食中のヒグマです
    (緑岳エイコの沢7/11)