ホソバウルップソウの下にあるもの

2007年6月29日 その2

 小泉平でホソバウルップソウの開花がすすんでいます。大雪山の固有種です。ところでウルップソウは湿潤な環境に生育する植物です。ところが、群落が見られる小泉平や赤岳山頂付近は、一見したところ沢が流れているわけでもなし、乾いた砂礫地のように思えませんか?
 じつは小泉平周辺の地中深くには、永久凍土という夏でも0℃以下の凍った岩盤があり、春から秋にかけその一部がとけて地面に滲みだし、植物たちに湿潤な環境を提供しているのです。こうして美しい群落を目にすることができるのも、地下に隠れる大機構が贈ってくれた恵みゆえ。
 小泉平は花の季節。今週来週見頃です。チョウノスケソウも咲き始めています。チョウノスケソウは例年より早い開花となりました。

 *開花状況*
 (小泉平)イワウメ○、エゾオヤマノエンドウ○、ホソバウルップソウ↑、チョウノスケソウ↑、チシマアマナ↑、ミヤマキンバイ○/(緑岳第一花畑)チングルマ↑、エゾコザクラ↑、キバナシャクナゲ↑、アオノツガザクラ↑

 *緑岳第一花畑~第二花畑は広い雪渓の連続です。潅木類が出てくると遮られ、とくに見通しの効かない天気のときはわかりづらくなります。目印は少ないので方向に注意。

 写真:ホソバウルップソウと白雲岳
       (小泉平 6/28)

白雲小屋

 霧の中、丘の上にぼんやり浮かんでいる四角い影が白雲小屋です。撮影は板垣新道から。例年ならこの時期はまだ板垣新道の雪渓はひとつの大きな雪渓なのですが、今年はもう真ん中の中州が現れ、雪渓が分断されています(写真/雪渓中央に走る帯の部分が中州)。好天と連続した雨の影響で雪解けが早まったようです。雪渓には目印のロープが渡されていますので、ここでルートを見失うことはありません。板垣新道は今、キバナシャクナゲの花道です。

*開花状況*(板垣新道~白雲小屋周辺)
キバナシャクナゲ、エゾコザクラ、エゾノハクサンイチゲ、ホソバウルップソウ、エゾオヤマノエンドウ、イワウメ
 
 写真:キバナシャクナゲ(6/28)

紅葉谷へ

 胸元近くまで茂るレイジンソウの花、かがんで見なければ見落としてしまいそうに小さなタニギキョウ、カツラの老木もハート型の葉っぱを空間いっぱいに広げ、紅葉谷はもう初夏を迎えていることに気付きました。山の上で春を追いかけていると、こうして山麓の森で流れる季節の移りに、はっとさせられることがあります。
 センターでは、紅葉谷など周辺でのミニ散策会を常時行っています。ひっそりと山野草が咲く森の路を歩いてみませんか?
 
 *職員体制の都合上実施できない場合もありますので、まずはお気軽にお問合せください。(所要時間30分~1時間)

 写真:オククルマムグラ(紅葉谷6/27)

大雪山山開き

 山開き。山の安全と無事を祈願し、朝一番のロープウェイはこの日を待ち侘び嬉々とした登山者を乗せ。早朝から降っていた雨は山の上にのぼるにつれ回復し、山頂に着く頃には汗ばむほどの快晴となりました。眼下には真っ白に続く雲の海。
 黒岳斜面の雪渓もとけ進み、登山道は雪解け水の流路と化し。それでも8合目上部まではまだほとんど雪の上を歩きます。足元の装備は万全に。北鎮岳の白鳥と千鳥の雪形もそれらしく姿を見せてきましたが、昨年と比べるとまだ1週間ほど遅れているようです。例によって、遅いところもあれば逆に早いところもありということか。今日は登山者に混じって山スキーを楽しむ姿もありました。

 *開花状況*(周辺黒岳山頂)
 イワウメ盛期、メアカンキンバイ○、エゾノツガザクラ蕾↑、ジムカデ↑、エゾノハクサンイチゲ(山頂直下で開花)

 写真:黒岳9合目(6/24)

新旧交代

 ウラシマツツジという植物は、紅葉期ともなると深紅に染まる葉によってその存在を強烈に主張するのですが、その花はというと、決してイワウメやミネズオウのように目立ちはせず、こそっと淡々と咲いているような印象を受けます。けれど、茶枯れに残った前年葉の中から、押し上げるようにして新しい葉っぱをきゅっと伸ばし、クリーム色の花を咲かせている姿はとてもたくましく愛しく、ついついしゃがみ込んで見入ってしまうのです。
 黒岳山頂から雲ノ平では、イワウメが花どきを迎えています。あさってはいよいよ黒岳の山開きです。

 *開花状況*
 (黒岳山頂~雲ノ平)イワウメ○、キバナシャクナゲ、ミネズオウ、ウラシマツツジ↑、メアカンキンバイ↑/(北海沢)ジムカデ↑、キバナシャクナゲ

 *北鎮岳分岐付近の雪渓は100m以上。急斜面、表面は締まり気味で上りも下りも滑りやすい状態です。赤石川は一部割れてきましたが、まだ雪渓上にコースをとります。北海沢周辺も雪が多く、視界不良時は注意。

 写真:ウラシマツツジ (6/22)
    旧葉と新葉と花