チビター新聞/(カエデシロップ他)

【カメムシ節気】
 3月6日は啓蟄。冬ごもりしていた虫たちが穴を啓(ひら)いて這い出してくる日です。もちろん暦の上では、です。虫が活動し始めるのは一日の平均気温が10℃以上になってからと言いますから、層雲峡ではまだ2ヶ月ばかり先のこと。せいぜい這い出してくるのは、冬ごもりの場所を提供している我が家のカメムシぐらい。

【カエデシロップ】
 折れたイタヤカエデの枝の先に小さなツララを発見。ただのツララではありません。イタヤカエデの樹液で出来たツララです。イタヤカエデの仲間は樹全体に糖分をたくさん含んでいるので、ツララもほのかに甘い味がします。甘いカエデの代表といえば、カナダの国旗にもその葉がデザインされているサトウカエデ。樹液からカエデ糖(メープルシロップ)がとれます。
 春が近づくと木々も休眠から覚め、根から水を吸い上げ始めます。

 写真:イタヤカエデシロップ

エゾフクロウ

 一瞬、目の前にふわっと白と褐色の羽毛が舞い上がり、音もなく谷間を下っていきました。エゾフクロウでした。近くに降りるともうその姿は周りの木々にとけこんでいます。とたんにシジュウカラたちが警戒しさかんに鳴き始めます。でもフクロウはしら~んぷり。眩しそうに目を閉じては、ときどきぐるりぐるりと首を回しているだけです。カラの混群は一致団結いっそうけたたましく鳴きたてます。やがてフクロウはいたたまれなくなったのか、尾根の向こうへ飛び去ってしまいました。森はまた静かになり、カラたちもいつものようにツピツピ鳴いています。てっきりカラのほうが逃げていくと思っていたのにそうではありませんでした。
 本当はフクロウもみんなに見つからないように木陰や洞でゆっくり休んでいたいだけ。けれど今ではフクロウが棲めるそんな森は少なくなってしまいました。
 明日は満月。ナイトトレッキングを計画しています。月明かりに浮かぶフクロウの森にゆったりと時間が流れます。

 写真:エゾフクロウ(デジカメ限界でした!)

シュカブラ日和

 空はスカイブルー。そしてしまり雪。となればもう外に出かけない手はありません。ちょうど昨日は休館日。お茶とおにぎりとおやつを持って、独り(プラス1匹)遠足に出かけました。北風が冷たく吹いても、太陽の光が上着を通して体に届いてきます。これからは固雪歩きが楽しい季節です。風の通り道には風の足跡、シュカブラ(風紋)が残っていました。まるで、さざ波がそこで静止してしまったようです。ときに風は雪原にも美しい波を起こしていきます。

 写真:シュカブラ(2/26)

しずくのなか

濡れたカツラの枝に
レンズのような小さな雫がついています
その雫に映るのは
サカサマになった小さな森

そして
そのサカサマになった小さな森の一本一本の枝に
サカサマになった小さな雫がついています
その雫に映るのは
サカサマのサカサマになったもっと小さな森

そして
サカサマのサカサマになった小さな森の・・・

小さな雫が内包する小さな世界は
途方もなく続いていきます

 写真:桂のしずく(紅葉谷2/23)

バームクーヘンできました

 「今日は半袖でも外歩けるかも」
 と豪語したくなるほど今朝は暖かくなり、谷間のあちこちで小規模な雪崩が起きています。太陽の出ていた午前中は、この冬最高となるプラス7℃を記録。午後になるとサッサと店じまいするように雲が広がって、さすがに雨にはなりませんでしたが、水分たっぷりの霙雪が降りました。紅葉谷には、春先特有の湿った雪がつくる「バームクーヘン」がたくさん転がっていました。
【バームクーヘンのできかた】
 表層の雪をくるくる巻き取りながら雪玉が斜面を転がる→どんどん転がる→さらに転がる→バームクーヘンの完成
「雪まくり」ともいいます。そしてこれは表層雪崩が起こりやすい雪質の条件のときに出来るので、野外では十分注意が必要です。

 写真:雪まくり(紅葉谷2/23)