ウコンウツギもチシマノキンバイソウも

 快晴、連休中日、花盛期。黒岳にも大勢の登山者や観光客が訪れて、登山道ではすれ違い待ちの渋滞発生。昨日は黒岳石室も宿泊者で満杯だったそう。
 雪渓は8合目周辺に3mくらいのが2箇所残るのみですが、これが曲者。踏み固められて凍りついたような状態で、とくに下りでは注意が必要です(先日この雪渓で骨折者が出たばかり)。今日は暑さのため、途中で熱中症にかかり下山している方が何人もいました。中には飲み物も持たずにという方も!人が大勢訪れようとも、登山は気軽なハイキングとは違います。気持ちにもしっかりとした装備が必要です。
 9合目、こぼれそうなほどに咲くウコンウツギにチシマノキンバイソウが鮮黄色を添える斜面。毎年楽しみな風景です。そろそろエゾツツジがいい頃かと期待しつつ、汗をぬぐって立った山頂は勝ってイワブクロが満開でした。

 *開花状況*
 (9合目)ウコンウツギ○、ハクサンチドリ○、チシマノキンバイソウ○、ミヤマキンポウゲ○、トカチフウロ○、クロユリ↓/(山頂)エゾツツジ○、イワブクロ○、エゾイワツメクサ○、コマクサ○、チシマキンレイカ○、イワヒゲ○

 写真:ウコンウツギとチシマノキンバイソウ
    (黒岳9合目・7/15)

キバナシオガマの顔

2007年7月12日(その2)

 小屋泊りの登山者はすでにそれぞれの予定地へ向けて出発し、今宵の宿泊者が到着するにはまだ早い正午前の白雲小屋はいたって静か。そこへブ~ンとやって来たマルハナバチが蜜を吸いに潜り込んだのは花も見頃のキバナシオガマ。日本では大雪山だけに生育する固有の植物です。「シオガマ」というと他にタカネシオガマ、ヨツバシオガマなどがありますがどれも花はピンク色。その中でも紅一点(この場合は黄一点)の黄色い花を咲かせます。じつはこのシオガマたちは、スゲの仲間に寄生する半寄生植物。ときどき感心するぐらい立派な株に出会うことがありますが、それもじつはスゲのおかげ半分。「寄生」も厳しい環境で習得した生きる技なのです。
 
 *開花状況*(白雲小屋周辺~小泉平)
キバナシオガマ○、エゾタカネツメクサ○、キバナシャクナゲ、チシマキンレイカ↑、エゾノハクサンイチゲ、エゾツツジ蕾~開花

 写真:キバナシオガマ(白雲小屋7/11)

小さいですが黒いのが。

2007年7月12日(その3)

 緑岳第二花畑の先、エイコの沢の崖斜面でヒグマが採食中。沢の音が気配をかき消すのか、それともよほど夢中なのかこちらを見向きもせずひたすら顔を地面に向けて草を食んでいました。
 高原温泉周辺は雪解けが早かった為、ヒグマも早い時期から活発に活動を開始し、沼めぐりコースでは今シーズンに入ってからすでに50件ほどの痕跡や個体が確認されているそうです(ヒグマ情報センター確認)。高根ヶ原斜面でも姿が確認され、三笠新道は7月5日より通行止めとなりました。
 「クマはいますか?」何度も繰り返したやりとりですが、こんな光景に出会うとあらためて素直に実感させられます。
 「はい」

 *緑岳コースの雪渓*
 (第一花畑)50m/(第2花畑看板付近)50m。花畑全体には大きな雪渓が乗っていますが淵の登山道が出てきました/(第2花畑~エイコの沢崖)100~150m程度。雪渓がくびれるように分断されてきました。ピンクテープの目印がありますが視界不良時は注意。

 *開花状況*
 (第一花畑)エゾコザクラ○、チングルマ○綿毛もあり、エゾノツガザクラ↓、ミヤマリンドウ↑、ヨツバシオガマ↑/(第二花畑)雪渓です/(ガレ場)イワブクロ↑、コケモモ○、エゾイソツツジ○、エゾマルバシモツケ○/(山頂)チシマキンレイカ↑、コマクサ↑、クモマユキノシタ↑、エゾタカネツメクサ○、エゾツツジ蕾~開花、エゾハハコヨモギ↑

 写真:中央の黒いのが採食中のヒグマです
    (緑岳エイコの沢7/11)

赤岳

 雨の音は随分久しぶりで、暑さに慣れた身にこの12℃はちょっと寒く感じます。
 さて連休も目前、コマクサ平はコマクサがちょうど見頃になっています。他にキバナシオガマ、イワブクロも○。現在赤岳コースでいちばん花が多く見られるのは山頂周辺とコマクサ平。それ以外の斜面はまだ雪渓が大きく残り、花の時期には早いようす。それでも徐々に登山道からは雪渓が後退し、第3雪渓ではキバナシャクナゲとエゾコザクラがちらほらと開花していました。
 コース難所は第一花園の斜め雪渓トラバース(200m以上)と第二花園の盛り上がるような雪渓。第二花園は雪が固くしまり尻もち続出。滑りやすくなっています。転倒注意。

 *開花状況*
(コマクサ平)コマクサ○、キバナシオガマ○、イワブクロ○、ヒメイソツツジ○、エゾツツジ↑/(山頂)チングルマ○、イワウメ、キバナシオガマ○、エゾタカネツメクサ○、チョウノスケソウ↓、ホソバウルップソウ↓

 写真:コマクサ平(7/11)

黄色の稜線

 風が吹きつける砂礫地という、高山帯のなかでもいちばん厳しい環境に根をおろし、季節の一瞬を指先ほどの小さな花でいっぱいにするタカネスミレ。お鉢平の間宮岳から松田岳にかけての大群落が壮観です。
 黒岳山頂やお鉢平でイワブクロが咲き始め、山にも夏がきたと感じる一方、斜面を変えればリュウキンカが雪解け水を受け今が春と満開に咲いていたり。偶然の環境に置かれたそれぞれが、必然の理由で根を下ろし、さらにそこには複数の季節が隣り合っています。一見何気なくされど。

 *雪渓*
 (赤石川)雪渓は落ち蛇カゴを渡ります。昨日はやや蛇カゴの上に水が被る状態でした。防水のきく登山靴とスパッツで対応。/(北海沢周辺)雪渓大きく残るが紅ガラの目印あり/(北鎮岳肩)雪渓100m程度。斜面は急でストックがあると安心/(黒岳斜面)7~8合目に数mの雪渓が数ヶ所。小さいけれど転倒注意

 *開花状況*
 (黒岳9合目)ウコンウツギ○、ハクサンチドリ↑、ミヤマキンポウゲ↑、チシマノキンバイソウ蕾~開花、エゾノハクサンイチゲ/(山頂)イワブクロ蕾~開花、コマクサ↑、タカネスミレ、イワヒゲ/(雲ノ平)キバナシャクナゲ○、チングルマ↑、エゾノツガザクラ○/(お鉢平周り)タカネスミレ○、クモマユキノシタ↑、チシマクモマグサ↑、イワブクロ↑/(北海沢)ジムカデ○、エゾコザクラ○、エゾノツガザクラ↑、チングルマ

 写真:タカネスミレ(松田岳周辺7/8)
    後方はトムラウシ