赤岳

 緑岳から下山は赤岳へ。土ぼこりが舞うほど乾いていた地面も黒く潤い、静まり返った霧の中ナキウサギが鳴き交わす声だけが何度も何度も響いていました。こんな日もいいものです。
 
 *雪渓*
 (第一花園)入り口手前に5m。看板付近に3m。あと2、3日で消えそう/(第2花畑)60~70m/(奥ノ平)30m/(第3雪渓)3m。2、3日で消えそう/(第4雪渓)10m2つ

 *開花状況*
 (第一花園)ウコンウツギ、チングルマ、ジンヨウキスミレ、エゾヒメクワガタ↑/(第2花畑)エゾコザクラ群落、エゾノツガザクラ○、チングルマ○、ヨツバシオガマ/(コマクサ平)コマクサ○、イワブクロ○、チシマツガザクラ↑、コケモモ○、ワタスゲ綿毛/(第3~第4雪渓間)チングルマ○、キバナシャクナゲ○、アオノツガザクラ↑、エゾノツガザクラ○、ジムカデ○、エゾノハクサンイチゲ○/(山頂)イワブクロ○、イワヒゲ○、キバナシオガマ○、エゾツツジやや↓

 赤岳も花がにぎやかになってきました。次の週末は第4雪渓のアオ・エゾノツガザクラ群落が楽しめそうです。

 写真:イワブクロ満開(赤岳山頂7/21)

霧の稜線

 カンカンの青空を見上げ「雨降りませんねぇ」とつぶやいてしまうほど今年の夏は晴れ続き。山行には良いのですが、山の上の花たちにとっては大問題です。もともと、高山という環境で乾燥や寒さに耐えられるように適応してきた高山植物ですが、花弁はシワシワ窶れ色は褪せ。どうにか凌いでいるといった様子がなんとも痛々しく。けれどそんな山にも久しぶりに霧雨が降りました。とたん、花はみるみる輝きを取り戻し、煙る霧雨の中全身で水滴を集めその一滴一滴を根に送り込んでいました。
 しゃがんで高山植物を観察してみてください。ぎゅっと緻密な葉も、細かな毛に覆われクッションのように柔らかな葉も、それぞれから保温と乾燥を防ぐために完成された機能の美しさが見えてきます。

 写真:エゾツツジもイキイキと
    (緑岳山頂・7/21)

緑岳の時間差花畑

2007年7月21日(その2)

 雪どけ間もない第2花畑、チングルマの小さな芽が雪解け水におぼれそうになりながらも吹いていました。蕾がやっと見えるぐらい。第1花畑で早くから咲いていたチングルマは、もう綿毛になって種を結んでいるというのに。
 山頂でチシマギキョウが2つ3つ開花していました。そしてリシリリンドウも。いよいよ青い花たちの登場です。

 *雪渓*
 (第1花畑)60m/(第2花畑)看板付近は消えました。第2花畑の先に30m程3箇所。登山道は雪解け水でぬかるみます。植物帯を踏まないようお願いします。

 *開花状況*
 (第1花畑)チングルマ花と綿毛、エゾコザクラ群落○、エゾノツガザクラ、アオノツガザクラ↑/(第2花畑)エゾコザクラまばらに/(山頂~小泉岳)エゾツツジ、エゾハハコヨモギ○、イワブクロ○、チシマキンレイカ○、ヒメイワタデ○、チシマギキョウ↑、リシリリンドウ↑、コマクサ↓、キバナシオガマ↓

 写真:第2花畑。まだ茶色い印象です
    (7/21)

雲ノ平のチングルマ

 黒岳石室を出発し、平坦に続く雲ノ平に足を運ぶとすぐに、登山道を縁取るように咲くチングルマの群落が現れます。直径1mくらいのこぶが、いくつも連なったようなユニークな地形が見られる雲ノ平。花が咲く前は緑色のこぶ。そこに根気よく1本1本花を挿しても、とてもこんな風には仕上げられません。
 
(ちなみに紅葉の季節は赤いこぶに変身します。)

 *黒岳7合目~山頂間の雪渓は消えました。
 
 *開花状況*
 (9合目)チシマノキンバイソウ○、ウコンウツギ、カラマツソウ○、ミヤマキンポウゲ、ヤマブキショウマ↑/(山頂)エゾツツジ○、イワブクロ○、エゾイワツメクサ○、コマクサ○、チシマキンレイカ↓/(石室~雲ノ平)チングルマ○、エゾコザクラ○、キバナシャクナゲ、コマクサ○/(北海沢周辺)エゾコザクラ○、ジムカデ○、チングルマ、エゾノツガザクラ、ミヤマリンドウ↑

 写真:チングルマ(雲ノ平7/18)

赤岳の登山道

 雪渓が後退し登山道が徐々に現れるようになると、雪渓上のトレースを軌道修正するための作業が重要になってきます。昨日も赤岳登山事務所のパトロールの方がルート旗の位置を変えたり、ロープを張ったりと慎重に作業を行っていました。
 「雪解け→雪渓上のトレースと本来の登山道がずれてくる→登山者:そのまま進んで登山道に出ようとする→植生帯に別の踏み跡ができる」このように、登山道が複線化する原因のひとつが雪解け時期に伴うもの(登山道に流れ込む雪解け水を避けての踏み跡も含めて)。
 「汚れるし歩きづらいから」「戻るのは面倒だから」
 けれどいったん痛んでしまった植生は、洗濯すればすぐ綺麗になるというような簡単なものではありませんし、もちろん人間のように自由に動くこともできないんですよね。

 *雪渓*
 (第1花園)看板付近に20m。その先に3mくらい小さく残る/(第2花園)100m程。斜面全体に大きく残り、固く滑りやすいので要注意/(奥ノ平)30m/(第3雪渓)15m/(第4雪渓)2つに分かれ20mずつ

 *開花状況*
 (第2花園)エゾコザクラ↑、チングルマ↑/(コマクサ平)コマクサ○、イワブクロ○/(第3~4雪渓間)エゾコザクラ↑、チングルマ↑、キバナシャクナゲ○、エゾノハクサンイチゲ、アオノツガザクラ蕾/(山頂)エゾツツジ↑、キバナシオガマ○、チシマキンレイカ、コマクサ○、エゾタカネツメクサ○、イワヒゲ、タカネスミレ↓

 写真:第2花園の雪渓(7/17)
    例年8月上旬頃まで残ります。