小さいですが黒いのが。

2007年7月12日(その3)

 緑岳第二花畑の先、エイコの沢の崖斜面でヒグマが採食中。沢の音が気配をかき消すのか、それともよほど夢中なのかこちらを見向きもせずひたすら顔を地面に向けて草を食んでいました。
 高原温泉周辺は雪解けが早かった為、ヒグマも早い時期から活発に活動を開始し、沼めぐりコースでは今シーズンに入ってからすでに50件ほどの痕跡や個体が確認されているそうです(ヒグマ情報センター確認)。高根ヶ原斜面でも姿が確認され、三笠新道は7月5日より通行止めとなりました。
 「クマはいますか?」何度も繰り返したやりとりですが、こんな光景に出会うとあらためて素直に実感させられます。
 「はい」

 *緑岳コースの雪渓*
 (第一花畑)50m/(第2花畑看板付近)50m。花畑全体には大きな雪渓が乗っていますが淵の登山道が出てきました/(第2花畑~エイコの沢崖)100~150m程度。雪渓がくびれるように分断されてきました。ピンクテープの目印がありますが視界不良時は注意。

 *開花状況*
 (第一花畑)エゾコザクラ○、チングルマ○綿毛もあり、エゾノツガザクラ↓、ミヤマリンドウ↑、ヨツバシオガマ↑/(第二花畑)雪渓です/(ガレ場)イワブクロ↑、コケモモ○、エゾイソツツジ○、エゾマルバシモツケ○/(山頂)チシマキンレイカ↑、コマクサ↑、クモマユキノシタ↑、エゾタカネツメクサ○、エゾツツジ蕾~開花、エゾハハコヨモギ↑

 写真:中央の黒いのが採食中のヒグマです
    (緑岳エイコの沢7/11)

赤岳

 雨の音は随分久しぶりで、暑さに慣れた身にこの12℃はちょっと寒く感じます。
 さて連休も目前、コマクサ平はコマクサがちょうど見頃になっています。他にキバナシオガマ、イワブクロも○。現在赤岳コースでいちばん花が多く見られるのは山頂周辺とコマクサ平。それ以外の斜面はまだ雪渓が大きく残り、花の時期には早いようす。それでも徐々に登山道からは雪渓が後退し、第3雪渓ではキバナシャクナゲとエゾコザクラがちらほらと開花していました。
 コース難所は第一花園の斜め雪渓トラバース(200m以上)と第二花園の盛り上がるような雪渓。第二花園は雪が固くしまり尻もち続出。滑りやすくなっています。転倒注意。

 *開花状況*
(コマクサ平)コマクサ○、キバナシオガマ○、イワブクロ○、ヒメイソツツジ○、エゾツツジ↑/(山頂)チングルマ○、イワウメ、キバナシオガマ○、エゾタカネツメクサ○、チョウノスケソウ↓、ホソバウルップソウ↓

 写真:コマクサ平(7/11)

黄色の稜線

 風が吹きつける砂礫地という、高山帯のなかでもいちばん厳しい環境に根をおろし、季節の一瞬を指先ほどの小さな花でいっぱいにするタカネスミレ。お鉢平の間宮岳から松田岳にかけての大群落が壮観です。
 黒岳山頂やお鉢平でイワブクロが咲き始め、山にも夏がきたと感じる一方、斜面を変えればリュウキンカが雪解け水を受け今が春と満開に咲いていたり。偶然の環境に置かれたそれぞれが、必然の理由で根を下ろし、さらにそこには複数の季節が隣り合っています。一見何気なくされど。

 *雪渓*
 (赤石川)雪渓は落ち蛇カゴを渡ります。昨日はやや蛇カゴの上に水が被る状態でした。防水のきく登山靴とスパッツで対応。/(北海沢周辺)雪渓大きく残るが紅ガラの目印あり/(北鎮岳肩)雪渓100m程度。斜面は急でストックがあると安心/(黒岳斜面)7~8合目に数mの雪渓が数ヶ所。小さいけれど転倒注意

 *開花状況*
 (黒岳9合目)ウコンウツギ○、ハクサンチドリ↑、ミヤマキンポウゲ↑、チシマノキンバイソウ蕾~開花、エゾノハクサンイチゲ/(山頂)イワブクロ蕾~開花、コマクサ↑、タカネスミレ、イワヒゲ/(雲ノ平)キバナシャクナゲ○、チングルマ↑、エゾノツガザクラ○/(お鉢平周り)タカネスミレ○、クモマユキノシタ↑、チシマクモマグサ↑、イワブクロ↑/(北海沢)ジムカデ○、エゾコザクラ○、エゾノツガザクラ↑、チングルマ

 写真:タカネスミレ(松田岳周辺7/8)
    後方はトムラウシ

五色ヶ原

2007年7月6日(その2)

 半年ものあいだ厚い雪の下に隠れていたというのにツガザクラの葉はしっかりと葉緑素を保ち続け、ふたたび光合成を始めようとしています。木道に這い蹲るようにして覗き込むと、様々な芽吹きに混じってエゾコザクラの蕾が並んでいました。
 五色岳直下になだらかに広がる草原の大半は、まだ時間が止まったままのように静かで殺風景。ようやくわずかな一角にエゾコザクラとキバナシャクナゲが咲き始めていました。それでもあくる日にはまたひとつまたひとつと蕾が開き、次に訪れたときには見違えるように変わっているのかもしれません。

 *雪渓*
 五色の水場の急登から五色ヶ原上部まで雪渓が数ヶ所あります。登山道にかかるのは30~50m前後と小さくなりましたが、沢沿いにはまだ100m近くありました。雪渓上では木道や登山道の入り口を確認しながらコースを歩きますが、視界が悪いときは注意。沼の原の大沼は幕営可。

 *開花状況*
(沼の原)ワタスゲ綿毛、チングルマ↓、ヒメシャクナゲ/(五色ヶ原)エゾコザクラ、キバナシャクナゲ、チングルマ:盛期は7月中~下旬

 写真:五色ヶ原上部 7/5
    (後方はトムラウシ)

チョウノスケソウ群落

 緑岳の稜線に辿り着いたとたん目に飛び込んできたのは花、花、花・・。
 10数年ぶりに見る光景だろうか?もしかしたら初めてかもしれない。ホソバウルップソウ、イワウメ、エゾオヤマノエンドウなど色とりどりに咲く花々が、数キロ離れた稜線まで確認できるほどの群落に出会ったのは。なかでも板垣分岐から小泉岳にかけてのチョウノスケソウの群落には圧倒された。以前15年ほど山小屋の管理をしていたが、こんなにもチョウノスケソウが咲くなんて思ってもいなかった。こうして毎年季節を通じ登っている大雪山だが、まだまだ見たことのない景色があり、新鮮な気持ちと山の奥深さを感じながら肌寒い稜線を後にした。(KA)

 *開花状況*(緑岳山頂~小泉岳)
 チョウノスケソウ○、ホソバウルップソウ○、イワウメ○、タカネスミレ↑、キバナシオガマ↑、レブンサイコ↑、エゾタカネツメクサ↑、エゾオヤマノエンドウ↓

 写真:チョウノスケソウ(小泉平7/5)