食べていたのは

2007年8月26日(その2)



 
 そしてこれがクロウスゴ(黒臼子)の実。
 亜高山~高山で見られます。
 花期は6~7月、壺型をした淡黄~薄紅色の花をつけます。

 (同場所で撮影)

ライオンとクマ

 観察会の下見で訪れた武華山、登山道沿いにはクロウスゴの実が丸々と膨らみ、稜線ではコケモモが赤い実を沢山つけていました。実り豊かな山です。動物たちにとって、もちろんヒグマにとっても・・。
 それは山頂で休憩を取りライオン岩へ差し掛かったときのこと。緩く弧を描く登山道の前方に出し抜けに現れたこげ茶色の毛深い背中!ヒグマです。突然のことに驚いたヒグマは凄い勢いで斜面の藪に飛ぶ込むようにして駆け下りて行きました。そしてそこには「今出したばかりです」というようなブルーベリー色の綺麗な糞が。糞の中味はすべてクロウスゴの実のようで、甘酸っぱいジャムの匂いがしました。それにしてもよほど夢中だったのでしょうか。鈴の音にも気付かぬくらいに・・。
 コケモモ、クロマメノキ、ガンコウラン。稜線は実りの季節です。夏の間、樹林帯でフキやセリ科植物などを食べていたヒグマも実を食べに稜線にやって来ます。ばったり遭遇を防ぐ為には、鈴などを携行し先にクマに人間の存在に気付いてもらうことが大切です。

 写真:ヒグマの糞~果実100%
    (ライオン岩にて 8/24)

 *武華山の登山道は倒木が多く、特にライオン岩コースでは倒木が登山道を塞ぎコースがわかりづらくなっている箇所がいくつかありました。通行の際は十分注意して下さい。

迎秋

 とてもじっとはして居られませんでした。本日午前10時の黒岳山頂の気温は5℃。寒い~~!昨日に引き続き強風。ときおりパチパチと雨粒も落ちてきて、体感的にはもっと寒く感じました。山はもう秋です。登山の際は防寒着の用意をしっかりと。平地では明日からまた気温が高めに推移するとの予報ですが、紅葉の季節はもう間近。写真はポン黒岳のウラシマツツジです。写真で見ると紅葉の雰囲気ですが、実際にはまだほんの一部です。
 今年はウラジロナナカマドの実の付きが良いようです。オレンジ色に色付いた実が緑の葉によく映えていました。

 写真:ウラシマツツジと石室
   (ポン黒岳8/23)

もうひとつの生き残り

 ナキウサギやウスバキチョウが「氷河期の遺存種」と呼ばれているのを耳にする機会は多いかもしれませんが、その逆で「温暖期の遺存種」ともいうべき動物がいるのをご存知でしょうか。
 高原温泉の緑岳登山口や沼めぐりコースでしばしば見られるニホントカゲこそがその当人。そもそもニホントカゲは温帯性の生き物で、冷涼な北海道では平地でもそれほど出会うチャンスは多くありません。それがなぜ大雪山に?
 今から約1万年前に氷期が終わると地球は温暖期に入り、6千年前の縄文時代は今よりも暖かい時代でした。その頃は低地の生き物も高地に登ってきていて、ニホントカゲもそうしてやって来ました。その後ふたたび寒くなると他の生き物たちは低地に下りましたが、高原温泉の暖かい地熱のおかげでニホントカゲは居残ることができたのです。言い換えれば陸の孤島に取り残されたとも。
 氷河期の遺存種と温暖期の遺存種の双方を受け止める大雪山は、いかに懐が大きいかということですね。

 写真:ニホントカゲ(高原温泉8/19)
   この美しいメタリックブルーの尾は幼体の時だけ。

綿毛ラッシュ

 前回通ったときに純白の花を咲かせていたチングルマはもう影もなく、代わりに花畑一面に広がる綿毛の姿。エゾコザクラも花を落とした後はヒョロンと茎が伸びて、先端には膨らんだ実がのぞいています。
 最後まで登山道に残っていた緑岳第1花畑の雪渓がようやく消えたのは8月第2週の後半。緑岳花畑のように雪解けが遅い場所は「雪田」と呼ばれ、そこで群落をつくるチングルマやエゾコザクラなどは雪解けと同時に花を咲かせます。そしてふたたび雪に覆われる前に実を結ばなければなりません。生育のために残された期間は限られています。やっと雪から開放されたと思ったらもう初雪だなんていう年もあるでしょう。
 短い季節にすべてを凝縮させ、無事に今年も綿毛になりました。順風に帆を揚げあとは風に乗っていくだけ。そうか「帆」は「穂」と思いつく。

 写真:チングルマ綿毛(緑岳第2花畑先8/19)

 *訂正とお詫び
 8/17掲載分で「7合目駅舎」とありますが「5合目駅舎」の誤りでした。お詫びいたします。