ウラとオモテがある

 蝶にもウラとオモテがあるのです。
 翅を閉じてとまっているときは白灰色に黒い斑紋。ところがその翅を広げると、表はこんなに鮮やかな瑠璃色をしています。シジミのように小さく身軽な舞いに、あれ?今何か横切った?それで名前もカラフトルリシジミといいます。
 北海道に生息する5種の高山蝶のうちのひとつで、かの有名なウスバキチョウと同じように天然記念物に指定されています(*5種のうち4種が指定)。一年目は幼虫で越冬し、翌年成虫になります。
 (翅全体が青いのはオスだけで、メスは茶色の部分が多い。)

 写真:カラフトルリシジミ(オス)
    (雲ノ平7/27)

五色ヶ原の花畑

 道のりの長さも忘れるくらい。
 7月上旬まで大きな雪渓があった五色ヶ原の中腹部。今やエゾコザクラとチングルマ、エゾノツガザクラのお花畑に変身し、昨日も登山者の賞賛を一身に受けておりました。そしてそれだけではアリマセン。
 チシマザサとハイマツを抜け、五色岳の天辺が目前にせまる五色ヶ原上部では、チシマノキンバイソウが花盛期。見渡せば登山道からずっと離れた遠くにも。路もなく、人が踏み入ることもないその場所は、曇り空にも関わらず光が射したように明るい黄色の帯のようでした。

 *開花状況*
 (沼の原湿原)ワタスゲ綿毛、ツルコケモモ、ホソバノキソチドリ、ミヤマリンドウ、タチギボウシ蕾/(五色ヶ原中腹)チングルマ○~↓、エゾコザクラ○、エゾノツガザクラ↑~↓、アオノツガザクラ蕾↑、ミヤマリンドウ、トカチフウロ○、ヨツバシオガマ○/(五色ヶ原上部~山頂)チシマノキンバイソウ○、トカチフウロ○、ヨツバシオガマ↑、チングルマ↓、エゾウサギギク、ミヤマオグルマ、ハクサンボウフウ

 写真:チシマノキンバイソウ
    (五色ヶ原7/26)

大雪山の茶屋的温泉

 中岳分岐から裾合平へ。急な斜面を下ると硫黄の香漂う中岳温泉。どうもこの温泉の匂いにヨワイんですよね~。すでに足湯を楽しむ先着の登山者で大盛況。山と高山植物に囲まれての、まさに疲れを癒す山の茶屋的温泉です。
 ところで、姿見の池周辺のように噴気孔がある所や、中岳温泉のような所は強い酸性土壌で、植物にとっては生育しづらい環境です。そのため、そのような場所では火山ガスや酸性に強い植物が現れます。代表的なのがハイマツとエゾイソツツジ。他にキバナシャクナゲやツガザクラ類、マルバシモツケなども中岳温泉周辺で見ることができます。
  
 *開花状況*
 (黒岳~石室)イワブクロ○、チシマツガザクラ↑、ヨツバシオガマ○、イワギキョウ↑/(雲ノ平)チングルマ綿毛と花、ミヤマリンドウ/(お鉢平~中岳温泉)エゾノ・アオノツガザクラ、イワブクロ、ウサギギク、コマクサ/(裾合平)チングルマ群落はそろそろ下り坂、エゾコザクラ

 写真:風に吹かれてちっともじっとしてくれない
    エゾコザクラと旭岳(裾合平7/25)

赤岳

 緑岳から下山は赤岳へ。土ぼこりが舞うほど乾いていた地面も黒く潤い、静まり返った霧の中ナキウサギが鳴き交わす声だけが何度も何度も響いていました。こんな日もいいものです。
 
 *雪渓*
 (第一花園)入り口手前に5m。看板付近に3m。あと2、3日で消えそう/(第2花畑)60~70m/(奥ノ平)30m/(第3雪渓)3m。2、3日で消えそう/(第4雪渓)10m2つ

 *開花状況*
 (第一花園)ウコンウツギ、チングルマ、ジンヨウキスミレ、エゾヒメクワガタ↑/(第2花畑)エゾコザクラ群落、エゾノツガザクラ○、チングルマ○、ヨツバシオガマ/(コマクサ平)コマクサ○、イワブクロ○、チシマツガザクラ↑、コケモモ○、ワタスゲ綿毛/(第3~第4雪渓間)チングルマ○、キバナシャクナゲ○、アオノツガザクラ↑、エゾノツガザクラ○、ジムカデ○、エゾノハクサンイチゲ○/(山頂)イワブクロ○、イワヒゲ○、キバナシオガマ○、エゾツツジやや↓

 赤岳も花がにぎやかになってきました。次の週末は第4雪渓のアオ・エゾノツガザクラ群落が楽しめそうです。

 写真:イワブクロ満開(赤岳山頂7/21)

霧の稜線

 カンカンの青空を見上げ「雨降りませんねぇ」とつぶやいてしまうほど今年の夏は晴れ続き。山行には良いのですが、山の上の花たちにとっては大問題です。もともと、高山という環境で乾燥や寒さに耐えられるように適応してきた高山植物ですが、花弁はシワシワ窶れ色は褪せ。どうにか凌いでいるといった様子がなんとも痛々しく。けれどそんな山にも久しぶりに霧雨が降りました。とたん、花はみるみる輝きを取り戻し、煙る霧雨の中全身で水滴を集めその一滴一滴を根に送り込んでいました。
 しゃがんで高山植物を観察してみてください。ぎゅっと緻密な葉も、細かな毛に覆われクッションのように柔らかな葉も、それぞれから保温と乾燥を防ぐために完成された機能の美しさが見えてきます。

 写真:エゾツツジもイキイキと
    (緑岳山頂・7/21)