ラスト花畑

 最高気温29℃。層雲峡は今年一番の暑さとなりました。え~29℃で一番の暑さ?と言われそうですが、標高約660mにある層雲峡は夏は涼しく冬は極寒。そして本日しばらくぶりにムシッと晴れ渡る空が広がり、今までこんなに暑いと感じたことがないくらい暑かった山の一日が、生温い空気を残してやっと暮れていこうとしています。ヤレヤレ。
 さて、バテ気味の登りで救いとなったのが緑岳第2花畑先のチングルマやエゾコザクラの群落。こんなに真新しい花が残っているとは思ってもいませんでした。花が終わり綿毛姿になったチングルマもフワフワキラキラと光に反射していて良かったのですが、今回の写真は今年ラストのお花畑風景にしました。今週末まで咲いていてくれるでしょうか?

 写真:緑岳第2花畑先(8/13)
    チングルマとアオノツガザクラ群落

これが水源

 雨後6日ぶりの黒岳です。すぐ上に青空が広がっているのはわかっているのだけれど、流れ続ける雲がわずかに開いた空の隙間を瞬時に隠してしまい、スキッとした天気は結局今日も望めませんでした。
 8月半ば、雨云々よりも時季も時季。案の定、山頂は花の姿もごくまばらで、イワギキョウの清楚なブルーの他は、雨に打たれ続けたイワブクロがかろうじて少々の花を残すぐらい。それでもお盆休みということもあって登山者も多く、石室の休憩スペースもいっぱい。何気なく石室売店に置かれたケースを覗くと、中には保冷材代わりに雪が投入されていて、よ~く冷えた缶ビールやペットボトルが並んでいました。
 今年は、石室の飲料水源となる周辺の雪渓が豊富で、9月も水が枯れずに済みそうかなと管理人の方曰く。確かに春先の石室周辺の雪の多さにはびっくりしていたっけ。おかげでこの時季でもエゾノツガザクラの群落に出会うことができました。

 写真:水源の雪渓とエゾノツガザクラ
    (ポン黒岳の下で8/12)

ワタシ光合成シマセン。

 続く雨、幾重もの灰色雲に覆われ山の頂も見えない毎日は、空気まで重たく感じます。
 湿度90%。笹が覆う薄暗い林床でヘンな植物を見つけました。全身は黄褐色、植物には欠かせない緑の葉もありませんし、花だって「コレが花?」というような風体。
 「シャクジョウソウ」という名のこの植物は、植物でありながら植物とは違った生き方をしています。光合成はせず自分では栄養をつくりません。代わりに自分の根に菌類を住まわせ、その菌類を介し一方的に栄養をもらっている腐生植物です。
 じつは、植物と菌類の関係はとても古く、かつて植物が水中から陸上に進出を始め、今こうして森をつくるまでに分布を広げることが出来たのも、栄養のやり取りをする菌類の助けがあったから。
 ただしシャクジョウソウの場合は、またちょっと別。栄養の「取り」はしますが「やり」はしませんから。かなりちゃっかりです。

 写真:シャクジョウソウ(層雲峡8/10)
    漢字で書くと「錫杖草」

国産タンポポ

2007年8月7日(その2)

 いまや日本在来のタンポポは希少な存在です。写真は綿毛姿のクモマタンポポ。高山に育つ生粋の日本のタンポポで、絶滅が危惧される種として指定されています。
 道端、空き地、はたまた庭の片隅にといたるところでごく普通に見られるタンポポはまず外来種のセイヨウタンポポで、たくましい繁殖力で増えています。大雪山でも忠別小屋周辺で靴底などに付着し運ばれたセイヨウタンポポの種が繁殖しているのが報告され、在来種との交雑も心配されています。

 写真:クモマタンポポ(8/6)
    赤と白が対照的です。

積極的な植物

 期待していたモウセンゴケの花。けれど霧雨の中ではどの花もぴたりと閉じたままでした。モウセンゴケは天気が悪いと花が開かず自家受粉をすると図鑑にはあります。
 沼ノ原湿原では、モウセンゴケとナガバノモウセンゴケの2種の食虫植物が見られ、7月末から8月上旬にかけて径1cmにも満たない可憐な白い花を咲かせます。食虫植物とはいえ、受粉のときはやはり虫たちに手伝ってもらいます。なんだか矛盾しているようですが。どちらにせよ、モウセンゴケにとって虫の来訪は大歓迎。そして当の虫たちは我が身を差し出す運命が待ち受けているとは思いもよらず。
 
 *沼ノ原登山道の丸木橋は雨の影響もなく健在。大沼幕営指定地は沼の水は引いていますが地面が湿ってやや沈む状態。

 *開花状況(沼ノ原湿原)
 タチギボウシ↑、ナガバノモウセンゴケ、モウセンゴケ、ミヤマリンドウ、ツルコケモモ、ウメバチソウ、ハクサンボウフウ

 写真:消化中。ナガバノモウセンゴケ
   (沼ノ原8/6)