迎秋

 とてもじっとはして居られませんでした。本日午前10時の黒岳山頂の気温は5℃。寒い~~!昨日に引き続き強風。ときおりパチパチと雨粒も落ちてきて、体感的にはもっと寒く感じました。山はもう秋です。登山の際は防寒着の用意をしっかりと。平地では明日からまた気温が高めに推移するとの予報ですが、紅葉の季節はもう間近。写真はポン黒岳のウラシマツツジです。写真で見ると紅葉の雰囲気ですが、実際にはまだほんの一部です。
 今年はウラジロナナカマドの実の付きが良いようです。オレンジ色に色付いた実が緑の葉によく映えていました。

 写真:ウラシマツツジと石室
   (ポン黒岳8/23)

もうひとつの生き残り

 ナキウサギやウスバキチョウが「氷河期の遺存種」と呼ばれているのを耳にする機会は多いかもしれませんが、その逆で「温暖期の遺存種」ともいうべき動物がいるのをご存知でしょうか。
 高原温泉の緑岳登山口や沼めぐりコースでしばしば見られるニホントカゲこそがその当人。そもそもニホントカゲは温帯性の生き物で、冷涼な北海道では平地でもそれほど出会うチャンスは多くありません。それがなぜ大雪山に?
 今から約1万年前に氷期が終わると地球は温暖期に入り、6千年前の縄文時代は今よりも暖かい時代でした。その頃は低地の生き物も高地に登ってきていて、ニホントカゲもそうしてやって来ました。その後ふたたび寒くなると他の生き物たちは低地に下りましたが、高原温泉の暖かい地熱のおかげでニホントカゲは居残ることができたのです。言い換えれば陸の孤島に取り残されたとも。
 氷河期の遺存種と温暖期の遺存種の双方を受け止める大雪山は、いかに懐が大きいかということですね。

 写真:ニホントカゲ(高原温泉8/19)
   この美しいメタリックブルーの尾は幼体の時だけ。

綿毛ラッシュ

 前回通ったときに純白の花を咲かせていたチングルマはもう影もなく、代わりに花畑一面に広がる綿毛の姿。エゾコザクラも花を落とした後はヒョロンと茎が伸びて、先端には膨らんだ実がのぞいています。
 最後まで登山道に残っていた緑岳第1花畑の雪渓がようやく消えたのは8月第2週の後半。緑岳花畑のように雪解けが遅い場所は「雪田」と呼ばれ、そこで群落をつくるチングルマやエゾコザクラなどは雪解けと同時に花を咲かせます。そしてふたたび雪に覆われる前に実を結ばなければなりません。生育のために残された期間は限られています。やっと雪から開放されたと思ったらもう初雪だなんていう年もあるでしょう。
 短い季節にすべてを凝縮させ、無事に今年も綿毛になりました。順風に帆を揚げあとは風に乗っていくだけ。そうか「帆」は「穂」と思いつく。

 写真:チングルマ綿毛(緑岳第2花畑先8/19)

 *訂正とお詫び
 8/17掲載分で「7合目駅舎」とありますが「5合目駅舎」の誤りでした。お詫びいたします。

登山トンボ

 わずか15分の帰りのリフト、冷たい霧雲に囲まれすっかり冷え切ってしまいました。でもさすがに心得たもので、黒岳ロープウェイの7合目駅舎には世間の季節を無視するかのようにストーブがゴーゴーと勢いよく焚かれ、冷えた体にはその温かさが嬉しく。ストーブ!つい一昨日までの閉口するような暑さが嘘のようです。
 視界を隠す霧雲も、9合目まで登ると雲海となって眼下に広がり山頂は晴天。稜線にはまばらに行き交うトンボの姿。麓からわざわざ避暑のためにやって来たアキアカネです。(いわゆる赤トンボ)じつはこの避暑移動には大きな理由があります。
 それは性成熟を秋まで遅らせること。アキアカネは秋に繁殖し、卵で冬を越します。けれど夏に羽化した成虫があまりに早く産卵しすぎると、冬が来る前に発生がすすみ幼虫になってしまいます。それを避けるために涼しい高山帯で夏を過ごし、生殖休眠をするのだそうです。
 そして成熟した赤トンボが山を降りていく頃、山には紅葉の季節が近づいてきます。それは、もう間もなくのこと。

 写真:アキアカネとチシマアザミ(黒岳8/17)

3度目の登場です。クモイリンドウ

 朝からいつものキレが全くない職員のK氏。聞けば昨日の山での日焼けがヒリヒリ痛み、おかげで寝返りも儘ならずまんじりとした夜だったとか。
 日焼けの理由はクモイリンドウ。赤岳山頂から小泉平、緑岳山頂付近にかけても見ることが出来ますが、集中的に株がたくさんあるのはやはり白雲小屋。写真は小屋一大きな株で、ざっとその花数40個!センターに勤務する以前、10年近く白雲小屋の管理人を務めていたK氏も、自分が知っているこれまでの中でいちばん花つきがいいと真っ赤な顔で証言。
 先の雨で花が痛んでしまったかと心配していましたが無事でした。今週末までは見頃です。

 写真:クモイリンドウ(白雲小屋8/13)
    後ろはトムラウシ山