黒岳石室

 久しぶりの黒岳石室です。奥の屋根はトイレ、手前がパトロール事務所。その間に埋もれて梁がかろうじて出ているのが石室です。この真っ白な雪の世界に、もう3ヶ月もすると最初の高山植物が咲き始めるのかと思うと信じられない気がします。
 ポン黒岳でホシガラスがコツコツと凍った地面をつついていました。賢いホシガラスは秋に埋めておいたハイマツの実をちゃんと覚えていて、食べ物の少ない時季に掘り返して食べるのです。近づいても逃げる様子もなくコツコツコツコツ。
 つかのま青空が見えたものの、すぐにまた雪が激しく吹きつけてきました。まだまだ山の春は遠く遠く・・。

 写真:黒岳石室3/17(後方は桂月岳)

大雪原生林

 今日は大雪原生林観察講座を行いました。石北峠、武華トンネル(現在新トンネルになりました)の周辺には、樹齢300年を越えるようなエゾマツや、直径1mを優に超すアカエゾマツの巨木など、原始に近い姿をとどめる針葉樹の森が広がっています。森林の国・北海道といえども、これまでの伐採や風害などにより今では原生林といわれるような森はほとんど見られなくなってしまいました。今日はその貴重な原始林の姿と、森が更新していく様子を観察することができました。
 途中、大きな切り株の上にクロエゾマツの稚樹が一斉に育っていました。しかもそれが尋常ではない混雑ぶりなのです!数えてみるとなんと35本もありました。
 森では倒木や切り株を苗床として、次世代を担う稚樹たちが育っていくのですが、このもじゃもじゃの切り株にはみんな合唱「エ~!ナニコレ!!!」 
 キニナル謎解き。エゾリスがタネを置き忘れていったのでしょうか?楽しい森の神秘です。

 写真:もじゃもじゃ!(根株更新3/11)

ダレだろう?

 先のカエデシロップの話しはまだ続きます。
では、誰がイタヤカエデの枝を折った(かじった)のか?
 鳥?エゾシカ?ん~・・
冬芽を食べ、甘い樹液が出てくることを知っていたのは、どうやらエゾリスのようです。
 ドングリ、クルミばかりじゃありません。樹液、キノコ、虫、鳥の卵、骨・・多彩なエゾリスのメニューは60種!
 そういえば確かにムチっと筋肉質な感じ。

 写真:エゾリス(冬毛3/6)

チビター新聞/(カエデシロップ他)

【カメムシ節気】
 3月6日は啓蟄。冬ごもりしていた虫たちが穴を啓(ひら)いて這い出してくる日です。もちろん暦の上では、です。虫が活動し始めるのは一日の平均気温が10℃以上になってからと言いますから、層雲峡ではまだ2ヶ月ばかり先のこと。せいぜい這い出してくるのは、冬ごもりの場所を提供している我が家のカメムシぐらい。

【カエデシロップ】
 折れたイタヤカエデの枝の先に小さなツララを発見。ただのツララではありません。イタヤカエデの樹液で出来たツララです。イタヤカエデの仲間は樹全体に糖分をたくさん含んでいるので、ツララもほのかに甘い味がします。甘いカエデの代表といえば、カナダの国旗にもその葉がデザインされているサトウカエデ。樹液からカエデ糖(メープルシロップ)がとれます。
 春が近づくと木々も休眠から覚め、根から水を吸い上げ始めます。

 写真:イタヤカエデシロップ

エゾフクロウ

 一瞬、目の前にふわっと白と褐色の羽毛が舞い上がり、音もなく谷間を下っていきました。エゾフクロウでした。近くに降りるともうその姿は周りの木々にとけこんでいます。とたんにシジュウカラたちが警戒しさかんに鳴き始めます。でもフクロウはしら~んぷり。眩しそうに目を閉じては、ときどきぐるりぐるりと首を回しているだけです。カラの混群は一致団結いっそうけたたましく鳴きたてます。やがてフクロウはいたたまれなくなったのか、尾根の向こうへ飛び去ってしまいました。森はまた静かになり、カラたちもいつものようにツピツピ鳴いています。てっきりカラのほうが逃げていくと思っていたのにそうではありませんでした。
 本当はフクロウもみんなに見つからないように木陰や洞でゆっくり休んでいたいだけ。けれど今ではフクロウが棲めるそんな森は少なくなってしまいました。
 明日は満月。ナイトトレッキングを計画しています。月明かりに浮かぶフクロウの森にゆったりと時間が流れます。

 写真:エゾフクロウ(デジカメ限界でした!)