黄色の稜線

 風が吹きつける砂礫地という、高山帯のなかでもいちばん厳しい環境に根をおろし、季節の一瞬を指先ほどの小さな花でいっぱいにするタカネスミレ。お鉢平の間宮岳から松田岳にかけての大群落が壮観です。
 黒岳山頂やお鉢平でイワブクロが咲き始め、山にも夏がきたと感じる一方、斜面を変えればリュウキンカが雪解け水を受け今が春と満開に咲いていたり。偶然の環境に置かれたそれぞれが、必然の理由で根を下ろし、さらにそこには複数の季節が隣り合っています。一見何気なくされど。

 *雪渓*
 (赤石川)雪渓は落ち蛇カゴを渡ります。昨日はやや蛇カゴの上に水が被る状態でした。防水のきく登山靴とスパッツで対応。/(北海沢周辺)雪渓大きく残るが紅ガラの目印あり/(北鎮岳肩)雪渓100m程度。斜面は急でストックがあると安心/(黒岳斜面)7~8合目に数mの雪渓が数ヶ所。小さいけれど転倒注意

 *開花状況*
 (黒岳9合目)ウコンウツギ○、ハクサンチドリ↑、ミヤマキンポウゲ↑、チシマノキンバイソウ蕾~開花、エゾノハクサンイチゲ/(山頂)イワブクロ蕾~開花、コマクサ↑、タカネスミレ、イワヒゲ/(雲ノ平)キバナシャクナゲ○、チングルマ↑、エゾノツガザクラ○/(お鉢平周り)タカネスミレ○、クモマユキノシタ↑、チシマクモマグサ↑、イワブクロ↑/(北海沢)ジムカデ○、エゾコザクラ○、エゾノツガザクラ↑、チングルマ

 写真:タカネスミレ(松田岳周辺7/8)
    後方はトムラウシ

五色ヶ原

2007年7月6日(その2)

 半年ものあいだ厚い雪の下に隠れていたというのにツガザクラの葉はしっかりと葉緑素を保ち続け、ふたたび光合成を始めようとしています。木道に這い蹲るようにして覗き込むと、様々な芽吹きに混じってエゾコザクラの蕾が並んでいました。
 五色岳直下になだらかに広がる草原の大半は、まだ時間が止まったままのように静かで殺風景。ようやくわずかな一角にエゾコザクラとキバナシャクナゲが咲き始めていました。それでもあくる日にはまたひとつまたひとつと蕾が開き、次に訪れたときには見違えるように変わっているのかもしれません。

 *雪渓*
 五色の水場の急登から五色ヶ原上部まで雪渓が数ヶ所あります。登山道にかかるのは30~50m前後と小さくなりましたが、沢沿いにはまだ100m近くありました。雪渓上では木道や登山道の入り口を確認しながらコースを歩きますが、視界が悪いときは注意。沼の原の大沼は幕営可。

 *開花状況*
(沼の原)ワタスゲ綿毛、チングルマ↓、ヒメシャクナゲ/(五色ヶ原)エゾコザクラ、キバナシャクナゲ、チングルマ:盛期は7月中~下旬

 写真:五色ヶ原上部 7/5
    (後方はトムラウシ)

チョウノスケソウ群落

 緑岳の稜線に辿り着いたとたん目に飛び込んできたのは花、花、花・・。
 10数年ぶりに見る光景だろうか?もしかしたら初めてかもしれない。ホソバウルップソウ、イワウメ、エゾオヤマノエンドウなど色とりどりに咲く花々が、数キロ離れた稜線まで確認できるほどの群落に出会ったのは。なかでも板垣分岐から小泉岳にかけてのチョウノスケソウの群落には圧倒された。以前15年ほど山小屋の管理をしていたが、こんなにもチョウノスケソウが咲くなんて思ってもいなかった。こうして毎年季節を通じ登っている大雪山だが、まだまだ見たことのない景色があり、新鮮な気持ちと山の奥深さを感じながら肌寒い稜線を後にした。(KA)

 *開花状況*(緑岳山頂~小泉岳)
 チョウノスケソウ○、ホソバウルップソウ○、イワウメ○、タカネスミレ↑、キバナシオガマ↑、レブンサイコ↑、エゾタカネツメクサ↑、エゾオヤマノエンドウ↓

 写真:チョウノスケソウ(小泉平7/5)

ワタスゲの湿原

 愛山渓から三十三曲がりコースをつづらに登り沼ノ平へ出ると、湿原にはワタスゲの白い綿毛姿が広がっていました。六ノ沼を過ぎ乗越までは、ハイマツに背をかがめ、岩とぬかるみを越えていく道のりですが、登山道の修復作業が少しずつ進められ、以前のようなひどいぬかるみは少なくなりました。
 乗越から裾合分岐までは雪渓が数ヶ所残っています。ピウケナイ沢は蛇カゴが一部崩れ水没中。渡渉時、ふくらはぎまで水がせりあがってきます。
 裾合分岐から湿原に戻る頃には、塔のように高く雲が湧き上がり、やがて遠くの空でゴロゴロ。帰路の滝コース、急ぐつもりが木陰に咲く山荷葉の透けるような白さに、思わず引き止められ。

 *開花状況*
(沼ノ平湿原)ワタスゲ綿毛、チングルマ、エゾコザクラ、ハクサンチドリ、コツマトリソウ/(当麻乗越)チングルマ、エゾノツガザクラ、イワヒゲ/(滝コース)エゾノリュウキンカ、サンカヨウ、ミヤマキンポウゲ

 写真:ワタスゲ(沼ノ平7/3)

赤岳

2007年7月2日(その2)

 まだまだ雪の多い赤岳コース。第1・第2花園、奥の平、第3・第4雪渓の5つの大きな斜面はほぼ雪渓歩きでした。昨日の日中はザクザク気味の雪質で、第4雪渓では尻滑りする人や上手にグリセードする人、そして慎重に横歩きでおりる人と様々。ただザクザクと思っていてもガリッと固い所もあるので要注意。今年と昨年の雪解け比べをすると、第一花園は今年のほうが早いのですが、第3・第4雪渓は遅いという変則ぶり。
 コマクサ平ではコマクサが開花。中旬ごろには花盛んとなりそうです。

 *開花状況*
(コマクサ平)コマクサ↑、メアカンキンバイ○、ヒメイソツツジ↑、クロマメノキ↑/(赤岳山頂~小泉平)ホソバウルップソウ○、チョウノスケソウ○、タカネスミレ↑、イワウメ、エゾオヤマノエンドウ○、キバナシャクナゲ

 写真:第3雪渓(7/1)
  雪渓の左淵に登山道一部出てきました。