さよなら・おかえり

 朝の楽しみは庭先に訪ねてくる野鳥たちを窓越しに眺めること。11月になってもまだ腰を落ち着けていたルリビタキもこのところ顔を見せず、ついに南へと旅立ったのか。長い旅路、無事でありますように。
 土手に面した山葡萄の蔓は、鳥たちの憩いの場となっているようで、太っちょのゴジュウカラが虫探しに精を出し、先に食事をしていたコゲラやシマエナガも遠慮するぐらい。一方、カケスが地面でしきりに何かを啄ばんでいる様子、一体何を?と見てみると、どうやらカメムシが目当てらしい。カメムシが減ってくれるならありがたいとカケスに感謝するも、何せここはカメムシ王国。どうしても供給量が消費量を上回ってしまうのです。
 旅立ってしまう鳥もいれば、越冬にやって来る鳥たちもいます。ツグミの賑やかな一団が北からやってきました。落ち葉をパッパッとひっくり返し、虫を探す姿が面白い。
 葉が落ちて、森はすっきりと見通しが良くなりました。野鳥観察には丁度良い季節です。

 写真:ゴジュウカラ(層雲峡 11月)

復旧と初雪

 実は先週の落雷により、しばらくインターネットが不通になっておりました。回線直撃の為、電話もファックスもみんなダメ。丸一日、陸の孤島となっていました。何とかその日の夕方には電話はつながるようになったのですが、インターネットの方は壊れたルーターの修理に数日を要し、本日やっと復旧した次第です。
 さて、この雷が「雪下ろしの雷」となり、先週金曜日は層雲峡だけではなく、旭川や上川などの平野部もついに初雪を迎えました。これが名残りとなった柳の黄色い葉も真っ白に雪を被り、峡谷は一夜にして雪景色。物置にしまっていた除雪スコップも半年振りの出番です。
 毎年の事でありながら、こうも唐突に新しい季節が訪れた朝は新鮮です。こうして踏みしめる新雪の感触を味わいながら、長い冬の始まりを思うのです。

 写真:温泉街神社裏にある黒岳登山口 
(11/4)

薄氷

 いつの間に降ったのか、周辺の低山がふわっと雪化粧しています。層雲峡に雪の便りはまだ届きません。
 黒岳6合目の登山道の水溜りに氷が張っていました。薄氷を見ると、ついパリンパリンと割ってみたくなるのですが、思いとどまりました。年輪のような渦模様を描くその端整なラインは、壊してしまうにはあまりにももったいない気がしたのです。
 自然がする仕事というのはどうしてこうも密かに大胆に美しいのでしょう。それは誰に見せようという意図もなく、だからこそいっそう美しく思えるのでしょうか。

 写真:粉雪をのせて(10/28

霜降(そうこう)

 これは昨夜の星空が置いていったのです。
 朝、目覚めると外は別世界になっていました。畑の取り残しの人参もヒメジオンの花も隣の屋根も、あらゆるものが霜の氷をつけて真っ白です。歩くたび長靴に触れるネコジャラシがしゃりんしゃりんと音を立てます。初めて見る景色でもないのに、初雪を迎えた朝のようにわくわくした気持ちになります。
 霜降りる頃、霜降を迎えました。これからはこんな幻想的な朝も日常となってしまうのです。

 写真:野原一面に降りた霜
(清川 10/25)

 【霜】霜は空気中の水蒸気が地物に接触して細かい氷を形成したもので、よく晴れた風のない夜に気温が氷点下に下がると出来ます。同じように、雪も空気中の水蒸気が昇華して出来た氷の結晶ですが、霜が地物に付着し成長するのに対し、雪の結晶は空気中に浮かんで成長します。
 (参考/雪の結晶)

カメムシ王国

 嗚呼、今年もやっぱり・・・。ため息がでる。カメムシの大群が今年もまたやって来た。とある昼下がり、壁という壁、窓という窓にびっちりへばりつき、隙あらば家の中へ侵入しようとカサカサうごめいている姿を目の当たりにしたときは恐怖さえ感じた。まるでヒッチコック映画だ。「カメムシ王国」というタイトルが頭に浮かぶ。
 カメムシと一口に言ってもその種類は非常に多く、層雲峡周辺でよく見るのはスコットカメムシという種類だ。夏の間はハンノキやミズナラなどの樹の汁を吸い、冬は集団で越冬する。そして、何と言ってもあの強烈なニオイ。あれがいけない。だがカメムシに悪気があろうはずもなく、結局まあこれはこれでとあきらめ、約7ヵ月ものあいだ共存の道を歩むことになるのだった。