注意喚起

登山道上でのトレイルランに関して

 松浦岳(緑岳)登山道の通称「エイコの沢ガレ場」を登り切ったところから、登山道は水平部に入り、ハイマツのトンネルの中を通過します。とくに名前はついていないので、仮にこの場所を「ハイマツのトンネル」としておきます。
 きのうのお昼前、この「ハイマツのトンネル」を通過しているときに、藪の中でガサガサという物音がして、大型の動物が逃げていく音が聞こえました。見通しの良い場所まで出て、エイコの沢の右岸側を見ると、案の定、ヒグマが雪渓を移動していく姿が確認できました。
 この「ハイマツのトンネル」は、以前から、藪の中で物音がしたり、蟻を捕食するための掘り返しがあったり、登山者がヒグマとバッタリ遭遇をしたことがあり、移動や採食などでヒグマが利用している可能性が高いエリアです。きのうの場合も、こちらが手をたたきながら歩いていたのに気づいて逃げて行ったのだと推定されます。この場所を通過する際は、鈴やホイッスルを鳴らす、手拍子を打つ、声を出す、など、ヒグマにこちらの存在を知らせるような行動をとってください。

 とくに注意してほしいのは、トレイルランナーの皆さんです。
 きのうも、ヒグマを目撃した数分後に、第二花畑の木道上で男女のトレイルランナーに抜かれました。鈴もつけずに走り抜けていくこの二人を見て「これは危ないな」と感じました。
 ヒグマがいる可能性がある場所を、音もたてずに、しかも登山者の数倍のスピードで走るのですから、バッタリ遭遇の可能性はふつうの登山者より高くなります。仮に、トレイルランナーがヒグマの存在に気付かずに走り去った場合、「背を向けて逃げたものを追いかける」というヒグマの習性から、ヒグマに攻撃される可能性を高める結果につながりかねません。
 トレイルランニングについては、環境省北海道地方環境事務所から「大雪山国立公園の特別保護地区及び特別地域内の登山道では、イベント等として行われるトレイルランニング等の走行利用は行わないよう指導する」という基本方針が出されています。それによりますと、走行による踏付け等により植物の損傷等が著しい場合など、自然公園法で原則禁止とされている行為と同等の被害を及ぼすおそれがあること、静謐な原生自然での登山利用をはじめとする一般公園利用者の自然体験を損なうのみならず、不快感や落石などの危険を伴う恐れがあるためとされています。
 ヒグマ対策だけではなく、国立公園の環境保全や、ほかの利用者との軋轢を高めてしまう可能性も指摘されていますので、登山道上を走る行為は遠慮していただくようお願いします。


写真 エイコの沢ガレ場対岸の雪渓場を移動するヒグマ 7/16

大雪高原沼

 先月末の大雨でヤンベタップ川に架かる橋が流され、同時に左岸側の登山道が崩落したため通行止めになっている高原温泉沼巡り登山コースの現況です。

 きのう(7月16日)現在、復旧作業は順調に進んでいます。7月10日の当欄でもご報告したように、橋本体はすでに掛け終わっており、いまは、階段から橋までのあいだの、崩落した登山道の復旧作業が行われています。きのうは基礎となる石組が続けられていましたが、作業の進捗状況としては8~9割がた終わっている印象でした。

 ヒグマ情報センターによりますと「今月下旬のコース再開予定は変わらない」ということですが、早ければ来週中のコース再開を目指しているというお話でした。コース再開を待ち望んでいる登山者の皆さんにはご不便をおかけしますが、いましばらくお待ちください。

写真 チェーンブロックによる大石の据え付け作業 7/16

緑岳第二花畑

 緑岳登山道は融雪がだいぶすすみ、第一花畑端部と第二花畑奥に数か所を残すのみとなりました。アイゼンを携行する必要はありませんが、ストックがあったほうが歩きやすい場所もあります。

残雪状況
第一花畑:端部に50mほど残雪あり。
第二花畑~エイコの沢ガレ場:第二奥10m,5m,5mと散在 エイコの沢ガレ場寄りに30m


 雪解けがすすんだぶん、雪田では植物の開花もすすんできました。第二花畑ではチングルマが見ごろになってきました。稜線ではエゾツツジの開花が始まり、来週には見ごろを迎えそうです。(写真参照)

開花状況
登山口付近:ダイセツヒナオトギリ↑
第一花畑:アオノツガザクラ・エゾコザクラ・チングルマ・ミヤマリンドウ↑
第一端部:エゾコザクラ○
第二花畑:エゾコザクラ・チングルマ↑ アオノツガザクラ始
緑岳周辺:タカネスミレ・ホソバウルップソウ終 メアカンキンバイ・イワヒゲ↓
  エゾツツジ・クモマユキノシタ・エゾタカネツメクサ・ヒメイワタデ・
エゾイワツメクサ・イワブクロ↑ エゾハハコヨモギ少
板垣分岐周辺:メアカンキンバイ・ホソバウルップソウ終 チョウノスケソウ・キバナシオガマ↓ イワヒゲ○ エゾツツジ・エゾノマルバシモツケ・ヒメイワタデ・エゾタカネツメクサ・エゾイワツメクサ・イワブクロ・チシマキンレイカ・コマクサ↑ クモマユキノシタ・ムカゴトラノオ始
板垣分岐上:ホソバウルップソウ終 チョウノスケソウ・タカネスミレ・キバナシオガマ↓ チシマキンレイカ○ エゾイワツメクサ・ヒメイワタデ・エゾタカネツメクサ・イワブクロ・レブンサイコ・エゾツツジ・コマクサ・クモマユキノシタ↑ ムカゴトラノオ・エゾマルバシモツケ・サマニヨモギ始
小泉平:ホソバウルップソウ・エゾオヤマノエンドウ終
 チョウノスケソウ・タカネスミレ・キバナシオガマ・ミヤマアズマギク↓
 コマクサ・チシマキンレイカ○
 エゾタカネツメクサ・エゾイワツメクサ・ヒメイワタデ・レブンサイコ・
イワブクロ↑
    リシリリンドウ始


写真 緑岳第二花畑 板垣分岐~小泉平中間部 7/16

赤岳コースの雪渓

 連日の高温と午後からのにわか雨で赤岳登山道の雪解けはさらに進みました。第二花園に大きく雪の斜面が残っているほかは、登山道上に雪が残っている箇所はわずかです。アイゼンを携行する必要はないでしょう。

残雪状況
第一花園:ほぼ消失
第二花園:ほぼ全面雪(写真参照)
第三雪渓:中間部から上部にかけて10m(写真参照)
第四雪渓:中間部に5mと10m分割された2箇所

 小泉平では、早咲きの植物は開花のピークを過ぎ、夏の花はまだこれからという端境期を迎えています。ホソバウルップソウ・チョウノスケソウは開花の盛りを過ぎましたが、タカネスミレやチシマキンレイカなどの黄色い花が見頃です。
 第三雪渓下ではエゾコザクラが、コマクサ平ではコマクサが見ごろを迎えています。

開花状況
登山口~第一花園下:ゴゼンタチバナ・ウコンウツギ・エゾツツジ○ ミヤマキンポウゲ・モミジカラマツ・ウメバチソウ・マルバシモツケ↑
第二花園下:エゾコザクラ・ジムカデ・チングルマ↑ アオノツガザクラ・ハクサンボウフウ・ヨツバシオガマ始
奥の平:エゾコザクラ・ジムカデ・チングルマ・ミヤマキンバイ↑ アオノツガザクラ・ウコンウツギ始
コマクサ平:コケモモ・コマクサ・チシマキンレイカ○ シラネニンジン・エゾノマルバシモツケ・イワブクロ・エゾツツジ↑ チシマツガザクラ始
第三雪渓下:ミヤマキンバイ・ウラジロナナカマド・エゾノハクサンイチゲ↓ エゾコザクラ○ アオノツガザクラ・ウコンウツギ・チングルマ○
第四雪渓下:ウラジロナナカマド○ エゾコザクラ・コエゾツガザクラ・チングルマ・アオノツガザクラ↑
赤岳山頂付近:エゾノツガザクラ・ミネズオウ・ミヤマキンバイ・チョウノスケソウ↓ タカネスミレ・キバナシオガマ○
赤岳~小泉分岐:メアカンキンバイ・コエゾツガザクラ・エゾノツガザクラ・キバナシャクナゲ・ミヤマキンバイ・イワヒゲ・チョウノスケソウ・ホソバウルップソウ↓ タカネスミレ・キバナシオガマ・チングルマ・イワヒゲ◯ チシマキンレイカ・エゾタカネツメクサ・エゾハハコヨモギ↑ エゾツツジ・エゾノマルバシモツケ・ヨツバシオガマ始
小泉平:ミヤマアズマギク・キバナシオガマ・ミヤマキンバイ・チョウノスケソウ・ホソバウルップソウ↓ タカネスミレ◯ エゾタカネツメクサ・チシマキンレイカ・エゾイワツメクサ↑ レブンサイコ・エゾツツジ始

写真 赤岳第二花園  コマクサ平 7/14

北鎮岳分岐下雪渓

北鎮岳分岐下の雪渓は、まだ大きく残っていました。

数日前の雨のせいかマーカーは登山道から大きく右にずれており、薄く消えかかっている状態
でしたが、その線に沿って階段状のステップが残っていたため、初めの急傾斜の部分も比較的
安心して登ることができました。しかし、途中からマーカーの線は消えてしまい、ステップも
なくなってしまいました。

そこから、斜面はなだらかになりますが、部分的に氷になっているところも見られました。
特に下りでは、雪面を注視しながらお進みください。

この日の雪は柔らかく、登り下りともヒヤッとすることはありませんでしたが、気温が下がって
雪の表面が硬くなるとアイゼンが必要な状況になるかもしれません。北鎮岳に向かう際には
万全の準備でお願いします。
(*北鎮岳分岐下の雪渓前にはスコップがあります。登りの方は必要に応じてご使用ください。)

北鎮岳分岐下の登山道脇では、エゾタカネスミレの群落が見られました。突然目の前に現れる
きれいな黄色の花たちに心が躍り、疲れも吹き飛ぶこと間違いなしです!



写真:北鎮岳分岐下の雪渓、北鎮分岐下のエゾタカネスミレ 7/10