新天地

 よーく、見てみてください。
 これはダケカンバの老木です。年輪を重ね威厳があります。
「・・?」
 けれどこの緑の葉はまぎれもなくアカエゾマツ。
 びっくり、ダケカンバの樹からアカエゾマツが生えてきた!
 新天地を求め、風に飛ばされ旅に出たアカエゾマツの種が芽吹いた所はダケカンバの枝股でした。数え切れないほどの季節を生きてきた老木、試練に歪んだその御身は、雨に打たれいつしか苔に覆われ、風に吹かれ土ぼこりを被り、こうして小さな種のゆりかごとなりました。
 いつしか老木が倒れるそのときに、このアカエゾマツは地に根を張るのでしょう。

そしてこれも風物詩

 雪原に無数の窪みが。これは「雪えくぼ」といいます。
日射や暖気で雪がとけて、その雪解け水が下の積雪層に浸透して集まると、こんなふうにポコポコと窪みができるのです。
 じつはここは浮島湿原です。だから水も集まりやすく「えくぼ」がたくさんできました。
 顔もほころぶ春の笑顔です。

これも風物詩

 緩んだ雪が朝方には固くなるこの季節。
 もっと固くなると、雪の上に乗っても足跡も付かずに、どんどん歩いて行けるようになります。テンやユキウサギ並みに歩ける貴重なチャンス。そんな日は朝早くから歩きに行きます。
 ただ気を付けなければならないのは、太陽が高くなる前に戻ってこないと雪がとけて、動物並みの歩行能力も標準的人間の歩行能力に戻ってしまうということ。
 「行きはヨイヨイ帰りはコワイ」
 そしてこの季節に出現するのが大きなスノーロール。湿った雪球が斜面を転がるうちに層になってどんどん大きくなりました。真冬のさらさら雪では絶対できません。
 雪ぬるむ頃の風物詩です。

大樹

 観察講座「上川十六景を歩く」で大雪原生林へ行ってきました。ここは、とくに石狩川源流地域の森林に壊滅的被害を与えた昭和29年の洞爺丸台風(なんと2本に1本が倒れる割合!)をまぬがれて、いまも原始の姿をとどめる貴重な森です。
 みんなで樹の大きさを測ってみました。周囲は大人2人で抱えても手が届きません。高さは37メートル(おおよその数字ですが)!みんながこびとになった素晴らしい一日でした。

季節はずれの。

 朝、寝ぼけまなこの枕元にカサコソ歩くカメムシと目が合いました。「クサイ臭い攻撃」をされないように丁重に指ではじき、顔を上げれば小さな蛾がハタハタと鱗粉をばらまいていました。そうか、もう啓蟄も過ぎたんだなあと春を感じた朝。
 紅葉谷に季節はずれのセミの抜け殻がありました。夏から一冬越えてしがみ付いていた相当粘り強い抜け殻です。