影美

 木立の長い影が滑らかに伸びている。夏の間は、そこらじゅうで緑がワサワサと茂っていて、影自体のかたちについて意識することもなかったけれど、いまは雪の斜面をキャンバスにしてそのかたちが際立って見えてくる。日が射すと、藍色の縞は斜面の起伏をなぞるように一斉に流れ、それこそ染物のような濃淡が生まれる。そして日が翳ればスッと消えてしまう。なんとあっさりしたものか。冬は影がいきいきとしている。