母グマの気持ち

 雪はすべてを隠してしまうばかりではありません。時に雪はそれまで見えなかった世界を、ドキッとするほど生々しく映し出してもくれます。
 薄雪を被った林の中に、ふたつのヒグマの足跡が残っていました。ひとつは大きな足跡。もうひとつは私の掌ほどしかない小さな足跡。母グマと仔グマの足跡です。仔グマは足跡の大きさからして今年生まれた仔のようでした。(*手足跡横幅が9cm以下は1歳未満の新生児と判別されています)
 ヒグマは11月中旬頃から12月中旬頃までの間にほとんどが冬ごもりに入るといいます。仔を連れた母グマの心境としては、早く居心地のいい穴に入って安心したいのではないだろうかと、ふたつ重なるように山へ続く親子の足跡を見送りながら思いました。

 写真:左の1つ/母グマの足跡
    右の3つ/仔グマの足跡
  (母グマ足跡隣/ワタシの長靴跡・11/16)